春遠からじ・・・ 21歳   序章

私の作った歌で、この歌を作ってよかったと心から思える出来事に遭遇した歌が二つあります。
一つは「父と母の歌」そしてもう一つは「春遠からじ・・・21歳」という歌です。
この「春遠からじ・・・ 21歳」という歌の話を3日連続で紹介したいと思います。

当時、Aさん(女性)が、ポツリポツリと話し始めた内容は、とても辛くて悲しい内容でした。
Aさんには、家が隣近所でとても親しい幼馴染のSさんがいました。
二人はいつも一緒で、お互いの悩み事や、恋の話に一晩中時間が経つのも忘れ、周りの友達もうらやむほどの仲良しだったそうです。

足に違和感を感じていたSさんは、最初はただの足のしびれかと思い、整形外科に通っていました。
ところがある朝、突然足が動かなくなりそのまま入院。
20歳の冬の出来事でした。
入院から3ヶ月経った頃、両腕も動かなくなります。
病名は多発性硬化症という神経系の難病でした。

でもそんな状態でも、Sさんはもの凄く明るかったそうです。
周りの人が病状を忘れさせるくらい、明るいSさんでした。
心優しいSさんは両親を初め、みんなに心配をかけたくないという一心で明るく振舞っていたのでしょう。
病院内でも明るいSさんが、一度だけAさんに「○○○怖いよ!!なんでこんな目にあわなきゃいけないの!!」と言って泣かれたそうです。
後にも先にもこの時の一度だけ・・・

Sさんの病状は悪化して行き、ある日視力がなくなってしまいます。
目が見えなくなったSさんは「○○○に会いたい!!」と父親に告げます。
父親はすぐに電話をします・・・ Aさんは留守でした。
電話を受けたAさんの父親が、「目が見えなくなった。○○○の声が聞きたい、うわごとのように言っている」
悲しみをこらえて娘への伝言を殴り書きのようにメモにしてテーブルの上に残しました。
バイトから帰ったAさんはそのメモを見て、びっくりして泣きながら病院へ向かいます。
病院へついたら病室の扉が開いていたそうです。
医師達と両親が色々な話をしていました。
そっとわずかな物音もたてずに病室へ入ったところ・・・
「○○○!!座って」目が見えないのにAさんの気配に気づいて・・・
そしてその気使いにAさんは胸がつまります。

ある日いつものようにお見舞いに行って病室を出て帰ろうとした時、突然「○○○バイバイ!」びっくりするくらい大きな声でAさんに声をかけたそうです。
何か感じる物があったのでしょうか・・・
それがAさんが最後に聞いたSさんの声となってしまいました。
病魔は休むことなくSさんの身体を蝕み声までも奪ってしまったのです。
そして昏睡状態に陥り、いよいよ最後の時を迎えてしまいます。
22歳の誕生日まであと1週間とした、1月のある日Sさんは天国へと旅立っていきました。

続く・・・

コメント: “春遠からじ・・・ 21歳   序章

  1. coco コメント:

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    ずっとコメントしたいと思いつつ時間が経って…。
    あえてひっそり、序章に書かせてもらっています。
    元気だった父が、いきなり余命2週間(実際には3ヶ月)と宣告された状況と、今回のお話が私の中ではダブルところがあって…、コメント欄へ書いた方がいいかどうかとか、直接メールをだせないものかとか、迷っていました。
    Sさんの様に命を見つめた話を知ることで、身近な人の死が蘇り、十数年経っていても、止まったままになってるいくつかの瞬間が、そのままになっている事を改めて感じました。無骨で不器用で愛情表現の下手な父でしたので、(子供とは手をつながず、一歩前を歩く。=守っている。とか今時ではない、そんな親いるのか?!というタイプ)家族への余命宣告、脳外科手術を経て、半身不随になりながら医者も驚く回復を見せ、2ヶ月半を過ぎた頃、「いつまで、看病するつもりだ。もう東京へ戻りなさい」と私を追い返しそうとし、私も余命を悟られないように帰るしかなく…。
    帰京2週間後、突然「夏に●●(私の名)が戻るまでに、歩けるようリバビリ頑張ってるから…。自分は大丈夫。仕事頑張れ。」と電話が。父からかかってきた生涯で1度だけの電話になりました。その夜、急変し他界、最後を看取る事はできませんでした。
    死を予感してかけてきた電話ではなかったと思っていますが…。
    帰京の際、病院の玄関まで車椅子を母に押されて出て来て、マヒの残った手を、やっと少し持ち上げて、「さよなら」と左右に振ろうとしていた姿が目に浮かびます。あえて不自由な方で…、最後まで父らしいと…感じながら、車の後部座席から振り返って、その姿を目に焼き付けました。
    また会えると信じようとしながらも、胸が熱くなったことなど、色々なことがSさんの話を読みながら、一気に鮮明に蘇りました。
    忘れてしまった訳ではないけれど、こうやって思い返すきっかけを与えて下さったYOUさんに感謝したいと思います。ありがとうございました。
    重ねて、長文失礼しました。

  2. 管理人 コメント:

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    coco さん、いらっしゃい。
    コメントありがとうございます。
    春遠からじ・・・ 21歳 を読んだ人数分のその人達が持つドラマがあるんだと感じました。
    あの物語で伝えたかったのは色々ありますが、人の運命という物の大切さ、はかなさです。
    同じ父親という立場で向き合って見れば、coco さんの父親の想いというのは痛いほどよく分かります。
    男として長い間、家長として一家を支えてきたわけですから、先に逝く事の怖さ、無念さは同じ家長としてしての立場でいる人はみんな理解できると思います。
    無骨で不器用、多分頑固者そんな人間を尊敬します。
    そんな打算を感じさせない男を尊敬します。
    「自分は大丈夫。仕事頑張れ。」と、娘にかけたこともない電話を掛けてくる父親を尊敬します。
    やっぱりSさんの場合もそうでしたけど、虫の知らせってあるんでしょうかね!!
    辛い思い出ですけど、けして悲しい事ばかりじゃなくて勇気を与えるような事もあるわけですから、時折思い出してあげてください。
    感謝という言葉を頂き、ありがとうございます。
    そんな思いをもてるcocoさんを育てたお父さんは素晴らしい人だったと思います。
    ありがとうございます。
    春遠からじ・・・21歳の返信は携帯やパソコンでもよくコメントをもらっています。
    もしコメントに書けないような何かありましたらメール下さい。
    matsubara@gs-you.com

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