2009年の桜はとても楽しんで見れるような心境じゃなかった。
妹にとってきれいな桜を見る事が、最後になるかも知れない・・・
そんな想いが絶えず襲ってきて、出来る事ならこのまま散らずに来年の春まで咲き続けて欲しいと願っていた。
総合病院での出来るだけの治療を受けた私達は、最先端治療であるという免疫療法治療の注射を銀座のクリニックに3回通って受けた。
日本一艶やかな銀座の街を、私達は車椅子にうなだれるように座った妹と駐車場から少し離れたクリニックまで歩いた。
きれいに着飾った若者から年配者まで、通り過ぎる瞬間にちらっと妹を見ていく
妹の心情を思うと、あまりにも可哀そうで悔しくってたまらなかった。
神様に怒りを向けたものだ。
クリニックの先生は、母親をガンで亡くしてこの病気と戦ってやろうという志で医学界に入ってきた、素晴らしい先生だった。
だからこそ、銀座の街まで通えたんだ。
注射を受けた後、府中の病院に到着した。
姉が正面玄関で桜の花がきれいだから花見に行こうと言い出した。
ストレッチャーで力なく横になっている妹と私達は桜の花を見るために正面玄関に回った。
「何を飲みたい」「・・・・・・シーシーレモン」妹が最後にリクエストしたシーシーレモンを持って、桜の花の前に並んだ
散り始めの桜の花は、当日の強風でまるでたくさんの花びらが空中を舞っているかのようにとても印象的な風景だった。
きれいでしょう きれいでしょう 問いかけに妹は静かに顔を少しだけ微笑ますだけだった。
病室に着いた妹の枕元に一枚の桜の花びらが隠れていた。
それを見つけた姉と私達は喜びながら笑いあった
あれから4年という時間が過ぎ去ったが、いまだにあの時の桜の花の乱舞が悪夢の様に忘れられない。
やっと今年この歌を完成してアルバムに入れることにした。
曽山良一さんの素晴らしいアレンジと木村ケイコさんのベースと唯一このアルバムで入れた奥山洋充さんのコーラスが、この作品を満足の行くものに仕上げてくれた。
最後まで悩んでいたこの歌を気持ちよく完成まで導いてくれた3人の友人達に感謝を伝えたい。
動画に出てくる桜の木は、この歌に出てくる桜の木でこの動画の為に、4年ぶりに訪れてみた。
当時、建築中だった新病棟は完成して私達が正面玄関に立っていた建物は、今は閉ざされてひっそりとしていた。
喜びも悲しも桜の花は思い出させてくれる